協力者 Vol.11

協力者 Vol.11

清美はどうも頭の中を覗き見されてしまう高峰に対して、違和感を覚えているらしい。挑発的な言動は、唯一の防御策だろう。怒りを打つける事によって、100パ-セント認めていない自分の立場を、暗黙の内に誇示しているのだろう。同じ意志が源三にも向けられた。

「私も、ずっと源三の面倒を見ている訳にもいかないし、常に思考を読まれてたんじゃあ、何時も無の状態に居なければならない。それは、ちょっと勘弁して欲しいわ」

清美の気持ちが、痛いほど源三には解かっていた。同じ特殊能力を持っている二人の間で、戸惑いや疎外感を覚えたのだろう。清美に特殊能力の実態を説明しなければならないと、源三は痛感した。最も、自分自身が今さっきまで戸惑い、パワ-返しの意味ですら把握出来ないでいたのだが、シンプルに受け入れてしまえば、そう難しい事ではなかった。

源三は卒倒した時、高峰の思考を読み込んでいたのだ。というより、勝手に向こうから頭の中に侵入してきた感じだ。

「清美、変に防御する必要ないで。このおばちゃんと離れたら、俺はまた只の凡人になるだけや。つまり俺の力は、特殊な能力を持った相手にシンクロするだけで、鏡みたいなもんや。甘利に会うた後、変な現象に襲われたけど、それは甘利の持ってた霊視能力の影響やったと思う。おばちゃんは所謂、読心術みたいなもんやろ。つまりこのセミナ-は霊視と読心術を上手い具合に組み合わせて、参加者をその気にさせとったんや。御祓いとか言うてるけど、二人に問題を解決する力なんてあれへんかった。そうやろ、おばちゃん」

高峰は外見からくるイメ-ジとはほど遠い少女のような甲高い笑い声を上げた。

「源三は随分、優秀だ。うちらの世界に関しても、十分知識を持っているようだしな。受け入れてしまえば簡単なことさ。理屈じゃなくな」

頭では解かっていても、はいそうですかと、直ぐに受け入れる許容量が清美には無かった。現在進行型の中で読み込まれるのは何の問題も無かったが、過去や対人感情を知られるのには抵抗があった。

「ちょっと、これ見てくれへんか」

源三がDVを渡辺に差し出した。

「甘利に最後、会うた時のもんや。おばちゃんやったら、何か解かるんちゃうか」

再び巨大スクリ-ンにプロジェクタ-から投影された映像が映し出される。今度はフィックスで撮影された甘利の上半身が大写しになった。JBLのスピ-カ-からバックノイズが極端に立ち上がってくる。今から思えば、甘利の顔面に死相が現われているようにも見えるが、プロジェクタ-の色調バランスが噛み合っていないからかもしれない。

画面がチカチカと変調をきたし始めた。発光しているのではなく、二重露光された“何か“が、断続的にインサ-トされている感じだ。変調の間隔が短くなり、甘利に覆い被さった“何か“が実体を見せ始めた。黒いモヤのように蠢く“何か“は、甘利の背後から覆い被さっている。

バックノイズの僅かな隙間に紛れ込んでいた不快な金属音が、変調とシンクロして強調されてきた。高峰は予期していたのか、別に驚きもせず画面を冷ややかにチェックしているが、清美は意外だったらしく、恐らく霊なる実体らしきものを初めて目の当たりにしたのだろう。口元をあんぐりと開いて微かに震わせている。
甘利が画面からフレ-ムアウトし、今度は訝しげに睨み付ける店員がフレ-ムの中を占領してきた。

「アッ!」と叫び声がして、画面はその声に引き摺られて移動を始める。不安定な映像は擦れ違う群集と雑居音をごちゃ混ぜにして不規則に進んでいく。画面の中心に走っていく清美の後ろ姿を捕らえていた。ノ-ファインダ-のカメラワ-クだが、清美と背景の改札口を的確に捕らえている。 場内に清美の怒号が響き渡った。

「止めて!」

Vol.12へつづく