協力者 Vol.12

協力者 Vol.12

渡辺は清美の要求にすぐさま反応出来ず、オロオロ戸惑いながら電源をOFFにした為、スクリ-ンはブル-バックに定着されてしまった。

「何やってるの!ポ-ズにしなさいよ」

清美は言い終わらぬうちに、デッキを再生して画面を巻戻しながら、チェック・ポイントに集中していた。

再びスクリ-ン上に映像が再生される。今度はスロ-再生の為、清美を中心に絶妙なカメラワ-クで背景がゆっくり移動していく。改札口に群集が溢れるようにして吸い込まれていった。

「ここよ!」と、ポ-ズボタンを押した清美は、画面に向かって叫んだ。

「私の見間違いなんかじゃなかった。ここにはっきり映っているじゃない」

スクリ-ン上にフリ-ズされた映像は若干、粒子が荒く解像力を欠いていたが、群集の中に甘利の姿と背後に法子の夫、清を確認するには十分だった。

「生霊とか言う前に、現実に清が映っているじゃない。甘利教授の死に大きく関わっている歴然たる証拠よ」

「だったら、甘利にまとわり着いていた黒いモヤはどう説明する。答えなくてもいいさ。どうせ、カメラのトラブルとか言うんだろう。どんなに証拠を突き付けられても認めようとしない。それがお前達の言う現実なんだ」

一向に霊の存在を認めようとしない清美に対して、高峰は愛想を尽かしたようだ。源三は二人の感情の行き違いが、手に取るように解かっていた。このままでは協力関係を保てない。捜査の方法を二分化する必要があるのと、互いに納得した形で、この先進めていかなければ、事の真相には辿り着けないだろう。もっとも、そんな悠長な事を言っている場合じゃない。舞は次に自分を狙っているのは間違いないからだ。事実、一度、死にかけている。死の恐怖は常にまとわり着いているのだ。

「ともかく今は舞を捜し出すしかないやろ。俺と清美は清を捜す。舞が清と一緒に居る可能性があるからな。おばちゃんはセミナ-参加者の消息を追跡してくれや。もしかしたらミチエは舞から別の誰かに乗り移ってるかもしれへんのやろ。つまらん議論する前に、ミチエが乗り移った奴を捜し出さんと、ここに居る全員の命が危ないんと違うか!」

威圧的な源三の怒号は、二人を納得させるには十分だったようだ。別れ際、高峰が清美に耳打ちしてきた。

「源三から目を離すんじゃないよ。もし、また異変が起きれば、それは舞が近くに居るということなんだ。ミチエの意志を阻止するには、舞と源三を対峙させなければならない。接近戦に持ち込むんだ。ミチエはその事を十分、熟知している。対峙させる前に源三を殺る積りだ。理解しなくてもいい。ともかく源三から目を離さないことだ。ただし、現段階では舞と特定しない方がいい」

「貴方はこう言いたいんでしょう。ミチエは舞を源三の周辺に位置させて、遠隔で仕掛けてくる。対峙してしまえばパワ-返しに遭うものね。恵で一度、失敗しているから、向こうも今度は周到に狙ってくる」

清美は好意的な笑みを浮かべた。高峰も、ばつが悪そうに笑った。清美と源三はホテルのロビ-を出て、停車していたタクシ-に乗り込んだ。車中、源三は運転手に「東中野」と告げたまま、腕組みをして黙りこくってしまった。

Vol.13へつづく