潜伏 Vol.1

潜伏 Vol.1

翌日、清美は源三を匿う為の場所を捜した。清が源三の言うように公安関係者だとしたら、人目を避けて潜伏させる必要があった。彼らの捜査能力は群を抜いている。まして、常に行動を監視されていたら防ぎようが無い。最悪、即座に逃走出来なければ、源三の身に危険が及ぶ。清美は霊の存在を認める立場には、飽くまでも立っていないが、特殊な能力を持ったミチエの意志が転移したとでも言うか、むしろ支配されたと言った方が的確かもしれないが、舞の存在は確実に認めていた。現実に源三は一度、死に掛けているし、甘利は既にこの世に居ない。舞を導いているのが清だとする確証もあって、源三のガ-ド方法を慎重に選んでいった。
最も有効な手段として、四六時中、移動する方法を選択し、小型のキャンピングカ-を一週間レンタルすることにした。小型と言っても、設置されているベットやデスク、キッチンは人が生活するには十分だし、簡易式のトイレとシャワ-も完備されている。カップラ-メンや缶詰類、飲料水などを三日分ほど積み込み、携帯用の酸素ボンベも用意した。仮に舞が遠隔で仕掛けてきても、窒息させない為だ。万一の場合に備えて、即座に原稿をメ-ル出来るように清美の使っているノ-ト型パソコンを積み込んでおいた。作業自体は源三が原稿用紙と気に入ったボ-ルペンで格闘するのだが。

準備は整った。運転は清美とマスタ-で代わる代わる交替することにした。ル-トは時間ごとに変えるとして、後は搭載されたカ-ナビに頼ればいい。源三はキャンピングカ-に乗り込むなり、デスクに向かって原稿を書き始めた。
清美はキャンピングカ-をスタ-トさせ、山手通りを目黒方向に向かって走らせていった。助手席に座ったマスタ-は、複数の出版社に携帯を掛けている。尾行に慣れているはずの清美だが、される立場になると随分、勝手が違っていた。常に後方から追尾してくる車両をチェックしなければならず、運転に集中出来なくなるのだ。危険性も考慮して、マスタ-に後方をチェックして貰うことにする。DVカムで後続車両を確認しながら、怪しければ運転席に向かってズ-ムを掛ければいい。前方だって侮れない。むしろプロフェッショナルに成れば成るほど、タ-ゲットの前を走る。そのほうがより気付かれないからだ。清美はNシステムが設置してある地点を出来るだけ通過するように心掛けていった。清が本当に公安関係者なら、自分達の姿が記録に残るのを極力、避けたいだろうと考えたのだ。逆に尾行の事実を記録することにもなり、清美にとっては保険になる。

山手通りの大鳥神社交差点を左折して目黒通りに差し掛かった地点で、マスタ-と運転を交替した。当然、前後の注意を怠らない。清美は運転席から乗り越えて助手席に移り、クロスしてマスタ-が運転席に着いた。パソコンを検索していた源三が、突然「あっ!」と大声を張り上げた。一瞬にして、車内に緊張が走った。ビクッとして源三の方に注意を向けると、「何でもない」という風に手を振っている。清美は僅かなことにでも神経質になっていた。改めて、ナビゲ-ションで渋滞情報をチェックする。品川方面は混んでいた為、マスタ-はキャンピングカ-をUタ-ンさせて、今、走って来たばかりの山手通りを戻り始めた。渋滞への突入を避ける為だ。ともかく停車していたら狙われやすい。清美は警察情報を知り得る手段を考えていた。情報を聞き出すのに誰か適任者がいないか、携帯のアドレスをチェックしてゆき、以前、教育係をしていた新人の谷茂に連絡を取る事にした。シフトが変更されていなければ、今日は非番のはずだ。谷茂はワンコ-ルで直ぐに出た。

Vol.2へつづく