果て無き興亡 Vol.6


果て無き興亡 Vol.6

興奮した清を制して、小男のしゃがれた声が割り込んできた。

「清、あんまり熱くなんな。後は私が説明する。事故の後、公安部が徴集され再捜査が行なわれた。驚いたね、事件に源三が関わっていたんだから。25年近くも鳴りを潜めていた源三がだ。我々は徹底的に調べた。すると、とんでもない事実が浮上してね。佐和子の両親は野崎雄一と珠美だったんだ。Rの被験者だよ。佐和子はプロジェクト凍結後、産まれた為にノ-マ-クだったんだ。措置入院後、佐和子は検査され、源三と同じく脳に異常が発見された。事件はこの二人によって引き起こされたと、我々は推測した。ところで川中精神病院はね、一度入ると再びシャバには出られない所でね、言ってしまえば、そういう連中の最後に行き着く姥捨山みたいな場所だって知ってました?我々にとっては、実に都合の良い所でね、つまり佐和子は世間から消えてくれるんだから。事故を切掛けに監視活動が再開され、今度は徹底した隠蔽工作が実行された。私が源三の監視役だ。予算も豊富に出たからね。我々が所属する部署は何時、解体されてもおかしくない状況だったから、ある意味、救われたんだ。疑問が一つ残った。どういう経緯で二人が出会ったのか?推測できるのは、お互いの能力が引き寄せ合ったと考えるしかなかった。そうすると源三は、佐和子によって25年も眠り続けた特殊能力を呼び起こされた事になる。以前とは比べものにならないぐらい強力な力をね。しかし、逆に佐和子は意識を飛ばされ廃人同然にされたんじゃ、救われない話しだけどな。源三に潜在していた能力は目覚めたんだ。本人が全く覚えていないってのも、都合が良過ぎるけどな。何れにしても我々は、慎重に監視活動を再開した」

「ミチエはどうなったの?生霊による連続殺人が行なわれたのよ。そうだ、娘の舞。舞の存在を説明してみなさいよ。作り話しはもう、うんざりだ!」

清がス-ツの内ポケットから、折り畳んだ書類を取りだして清美の前に拡げた。もう何を見ても驚きはしない。書類は、一ノ瀬家の戸籍謄本だった。清が指し示した指先に記入されていた“死亡“の文字を見た瞬間、清美は叫んでいた。

「そんなバカな。舞は・・・。舞は三年も前に死んでいるじゃない。じゃあ、甘利のセミナ-に参加していたのは誰だったの?」

冷静さを取り戻した清が、丁寧な口調で説明を再開した。

「ミチエが舞と恵の双子を出産したのは事実です。ミチエの両親である一ノ瀬夫婦が引き取ったのもね。実の孫ですから当然ですけど。先に確認を取らせて下さい。ミチエは特殊能力とは無縁な女です。単なる頭のイカレタ女というだけで、娘達も母親が奇抜な犯罪者という以外は、何の能力も無い平凡な娘達なんです。掲載記事を読みましたが、あれは良く出来ていた。恐ろしく巧妙にミチエをでっち上げている。だが、飽くまでも作り話しです。戸籍謄本が事実を語っているでしょう。舞は三年前、交通事故で死亡している。ミチエの霊が取り憑いた舞自体が存在しないんです」

「でも、舞はセミナ-に参加していた。それじゃあ、あれは一体誰なの?」

「恵ですよ。身元不明の少女、恵です」

「どうして恵が舞の名を語る必要があるの?セミナ-で霊能力者の高峰と交流した時、自分は浅田ミチエだとはっきり言ったのよ」

「まだ気が付きませんか?」

小男がリモコンでテレビに繋がったDVカムを作動させた。画面に定点カメラで撮影された映像が映し出された。裸体の男女が抱き合っている。源三に見せられた映像と同じものだ。以前、見た時と今とでは、受ける印象が随分、違っていた。嫉妬にも似た感情がふつふつと沸き上がってくる。清美は画面から目を反らした。

Vol.7へつづく