果て無き興亡 Vol.7


果て無き興亡 Vol.7

「これなら源三から見せられたわ。貴方達が仕掛けたんでしょう」

「法子を監視する為です。彼女は五年前の事件にも注目していましたから」

「何も映っていないから、わざわざ編集して源三に送り付けたんでしょう。自分が殺ったかもしれないと思わせる為に」

法子の喘ぎ声が高まった。二人の激しい息遣いが清美の感情を不安定にしていった。

「見て下さい。最も重要なシ-ンが始まります」

法子の上に重なっていた源三が動きを止めた。法子の吐き出す息遣いだけが聞こえる。源三は微動だにしない。ギィ-ギィ-と耳障りな金属と金属が擦れ合うノイズが走った。一瞬、画面が点滅したように見えた。清美の集中力が高まっていく。突然、後方に引っ張られた源三が立ち上がった。まるで見えない吸引力に吸収された感じだ。背中向きに立っているので、表情は解からない。法子が悲痛な叫びを上げて身体全身を痙攣させた。よく見ると、法子の身体は床から少し浮かんでいる。思わず、清美は清の顔を見た。

「始まります。しっかり見てください」

再び画面に目を戻すと、法子を見下ろしていた源三がこちら側に向き直っていた。表情がはっきり解かる。源三は白目を剥いて、苦痛に満ち溢れた表情になっていた。法子はさっきより高い位置に浮遊している。

「あ~!」

源三の口元がだらしなく開き、悲痛な呻き声が漏れてきた。清美は源三の行動から目が離せなかった。そんな清美を察した清は「ここです。法子の方を見てください」と指示してきた。法子の方に目をやると、口を限界まで開いて激しく痙攣している。苦痛に悶え苦しむ呻き声が、微かに漏れてきた。尚も口を無理矢理、開こうとしている。疾うに限界は超えているはずだ。ゴキュと鈍い音がした。顎の骨が外れたのだろう。法子の口は最大限に開放され、下顎がグニャリと垂れ下がっている。
瞬間、法子の左手が開放された口の中へ、凄まじい勢いで吸い込まれていった。というより、体内から目に見えない力に引っ張られたと、形容した方がいいかもしれない。少なくとも、清美にはそう見えた。白目を剥いた法子の顔は、この世のものでは無かった。最後の虚しい抵抗が、呻き声となって聞こえてきた。法子の鼻の穴から殆ど消化されていない吐瀉物が、留めもなく噴き出した。腹部の辺りがドクンドクンと波打っている。想像を遥かに超えた拒絶反応を起こしているのだ。吐瀉物はボタボタと音を立てて、床の上に落下していった。

「ウゲッ!」

断末魔の叫びを上げて、痙攣は止まった。法子の身体はゆっくりと床に向かって降下していく。同時に、耳をつんのめくノイズが、何処か別の場所に吸収されていった。気が付くと、源三は床の上にうつ伏せになって倒れていた。気を失っているようだ。静寂だけが残っている。目の前で展開した光景に、清美は現実感が持てないでいた。特殊効果でも施したんじゃないかと思ったほどだ。

-何の為に?-
-それははっきりしている-
-源三を犯人に仕立てる為だ-

その考え方には矛盾があった。清達にとって法子の消去は有り得ても、源三を陥れることは先ず有り得ない。常に監視を続けて、もし何かあれば隠蔽工作を行なうのが全ての任務だからだ。源三を生存させておく事で任務は成立のだ。画面に変化は無かった。法子と源三がだらしなく横たわっているだけだ。どれぐらいの時間が経過したのだろうか?清美の時間感覚は麻痺していた。無理もない。三日間、眠りっぱなしだったのだ。目覚めてから正常な思考回路は、未だ回復していない。複数の足音が響き渡った。画面へと、清美の視神経は過敏に反応していった。二つの人影がフレ-ムインしてきて、源三の周りを取り囲んだ。背中向きになっている為、人物の特定は出来ない。二人は脱ぎ捨ててあった衣服を手早く源三に着させ始めた。二人の人物がこちら側に振り返った。顔が明確に確認出来る。清美は画面に映し出された光景を目の当りにして叫んでいた。

「こっ、これ・・・。この二人、マスタ-と高峰・・・。どうして~!!」

Vol.8へつづく