果て無き興亡 Vol.9

果て無き興亡 Vol.9

清美はあの時の情況をもう一度、思い起こしてみた。

(そうだ、緊迫していた情況下で、自分の興味は清だけに注がれていた。源三の行動は確認していない)

14番ホ-ムをのぞみが出発した後、別のホ-ムで源三と再会したのだ。清の言う通り、空白が存在する。列車の発着音は常に鳴り響いていた。源三が「ホ-ムや」と叫んだ時、のぞみはまだ出発していなかったのだ。轟音は別の列車のものだ。清と小男が立ち上がった。

「Rの真相が暴かれた以上、我々の任務は終了しました。副作用によって、この世に怪物を誕生させてしまった事実を含めてね。5年前の事件で、野崎夫婦は真相を知ったんでしょう。彼らは世間に告発し、佐和子を救出する為に何年も掛けて準備をして、遂に実行してしまった。見事と言うしかない」

清美も残された力を振り絞って立ち上がった。

「貴方達は全てを見ていたのね」

清が冷ややかに答えた。

「それが仕事ですから。たとえ対象が目の前で殺人を行なおうとも、止める事は出来ない。ただ見ているだけです。但し、一連の全てを見ていた訳じゃありません。限界は生じます」

唯一、怒りだけが、清美をその場に崩れることなく、立ち止まらさせていた。

「源三達は何処へ?」

「解かりません。それを捜査するのが、貴方の仕事だ」

小男がテレビと接続したDVカムを取り外しながら言ったが嫌味な感じはしなかった。「中川警部補、貴方は優秀な捜査員だ。我々の追跡を見事、けむに巻いたんだから」

「でもそれは源三にだまされていた。マスタ-や高峰にも。私は雑誌に掲載された内容を、何の疑いも持たなかった。優秀どころか、ただ利用されただけのマヌケじゃない」

虚無感が清美の中で拡がった。源三を信じていたのだ。それ以上の感情があった。

「それは少し違いますよ。源三は貴方と合流するまでは、何も解かっていなかったはずです。記憶を失ったままだと、判断していいでしょう。全てを操っていたのは野崎雄一と珠美です。源三の無意識を利用したんです。浅田ミチエの生霊をデッチ上げ、娘の恵を源三に差し向けたんでしょう。源三の潜在する特殊能力に干渉する為に。恐らく、一ノ瀬夫婦はこの世にいないでしょう。5年前の事件の真相に感付いた法子を葬り、舞の存在に疑問を抱いた甘利も同じように。丸尾一家に関しては、警察情報に通じている貴方を、巻き込む目的でね。どの段階で源三は全てを知ったのか?それは我々にも解かりません。多分、最後まで知らなかったんじゃないかと思います。もし記憶を全て取り戻していたなら、彼は果して正常なままで居られたかどうか?」

何故だか清が言ってくれた事で、清美は救われたような気になった。小男がDVのカセットを差し出してきた。

「これが真実だ。最も証拠として採用されるか如何か解からんが、説明の付かない現象が映っているんだ。法廷では恐らく何らかの加工を施した可能性を指摘してくるだろうから。テ-プは貴方が持っていなさい。何時か採用される日が来るかもしれない。まあ、我々が生きている間は無理だろうけど」

「もう逢う事もありませんね」

清が悲しげな表情を一瞬、見せたような気がした。清美は無意識に敬礼していた。清と小男もそれに応える形で返してきた。

再捜査Ⅱ Vol.1へつづく