再捜査 Ⅱ Vol.7

再捜査 Ⅱ Vol.7

谷茂は清美の前に出て、先導しながら分け入って行った。既に二人供、役に立たないビニ-ル傘を投げ捨てていた。靴はグシャグシャになり、足裏がジンジン麻痺してきている。雪の降り積もった草木は思った以上に重たく、更に進路を妨げていった。どれだけ進んだのか方向感覚まで麻痺してしまいそうになりながら、二人の前に錆び付いた鉄格子が立ちはだかった。

「これ以上、進めないですね」

谷茂は鉄格子を揺さ振りながらあきらめ顔になった。清美はペンライトを取り出しくまなくチェックし始めた。

「出入り口ぐらいあるでしょう」

鉄格子に沿って歩いていくと、『国有地』と記された看板が現れる。

「そうとう古いわね。利用する積りなんて、はなっから無いみたい」

「隠蔽ですか?」

二人は顔を見合わせた。特定エリアを一周するように張り巡らされた鉄格子が途切れて、腐食した箇所がペンライトの光の中に浮かび上がった。よく見ると腐食した部分は外的圧力で突破されたようだ。清美は聖域とも思えるようなエリアに足を踏み入れて行った。背後に谷茂がいるせいか、不思議と怖さは無かった。

「なんか、ここだけ空気違いますよね。先輩、やばいっすよ」

谷茂の言うとおり、鉄格子の中と外では明らかに圧力差があった。少しでも気を抜けば足元から引きずり込まれてしまいそうなぐらい強烈なものだ。

「確かに変ね。この中、雑草すら生えてない」

清美は麻痺した足を滑らせて、降り積もった雪を掻き分けていった。中から黒々と湿った土壌が現れる。闇の中から迫って来る旧式の日本家屋は二階部分が吹き飛ばされた様になって、そのまま放置されていた。ペンライトをかざしてみるが、部分的に確認できるだけで全体像を把握するには無理があった。

「台風って、四十年前だって言いましたよね」

震えた声のほうにペンライトを向けると、谷茂のこわばった顔が浮かび上がった。

「そうよ。二階が吹き飛ばされて、生存者は今井源三だけよ」

谷茂が僅かに後ずさった。谷茂の次の言葉を待ったが、いっこうに発しようとしない。清美にイライラした感覚が湧き上がってくる。

「だから、何なのよ!」

清美の強い口調に威圧された谷茂は、更に後ずさりながらガチガチと奥歯を鳴らしている。

「そっ、それにしては・・・。ここ新し過ぎませんか?」

エッとなって振り返った清美の目前に、再び旧式の日本家屋が迫って来た。改めて確認してみる。ペンライトで浮かび上がったディテールは確かに谷茂の言うとおり、四十年前に倒壊したとは思えないぐらい風化してはいなかった。

「ツタは絡まってないし、コケだって生えてない。第一このまま建ってること事態、おかしいですよ。普通四十年も経てば崩れるんじゃないですか」

「国が買い上げた後、誰かが管理してたのよ」

「それだったら、こんな残骸、撤去して更地にしませんか?」

もう一度、確認してみる。外壁に使用された木材は、表面に焼きは入れてあるが風化した形跡は見られなかった。誰かが管理していると考えると、やはり矛盾が生じてしまう。用途が無いからだ。

「先輩、まじでここヤバイですよ!」

Vol.8へつづく