291号室 Vol.7


291号室 Vol.7

大和市街を通り過ぎると、すぐに、のどかな田園風景が広がった。暫く車を走らせていると、川中精神病院は、忽然とその姿を現わした。高いフェンスに囲まれ、一見しただけでは拘置所と見間違えてしまう程だ。ゲ-トを抜けるとコンクリ-ト打ちっぱなしの窓一つない建造物が立ちはだかった。コンクリ-トの箱と形容した方が良さそうなぐらい、巨大で圧迫感がある。田所は見上げながら溜息を漏らした。

「これじゃ、巨大なお墓じゃない」

駐車スペ-スに車を停車させ、三人は降り立った。

「噂には聞いてましたが、これ程の物とは」

甘利ですら圧倒されている。エントランスに入ると、天窓から自然光が差し込んでいて、クリ-ンな空間が広がった。外観からくるイメ-ジと随分、違っている。源三は面会受付の窓口へ向かった。

「すいません、予約しておいた今井ですが」

中から警備員が顔を覗かせ、カ-ド・キ-を差し出してきた。

「エレベ-タ-で直接どうぞ」

源三は手慣れた手付きで、エレベ-タ-・ホ-ルのロックにカ-ド・キ-を差し込んだ。直ぐにロックが解除されてドアが開いた。三人供ほぼ同時に乗り込んだ。エレベ-タ-内に操作パネルは無い。田所と甘利は緊張した面持ちで押し黙ったままだ。そのままドアが閉まり、上昇していった。停止したフロア-に降り立った田所と甘利は、我が目を疑う事になる。目前に広がるフロア-全体が、がらんどうになっていて、四方の壁面に複数のモニタ-が埋め込まれている。ざっと数えても一面に百個ぐらいのモニタ-が設置されている為、全ての面を換算すると、少なく見積もっても四百個のモニタ-に囲まれた空間内部と言う事になる。ただし、現時点では、どのモニタ-も稼動していない。白衣を着た大柄な男が三人を迎えた。

「訪問者とは又、珍しいですな。医院長の佐世保です」

「妻がお世話になっています」

源三は佐世保に深々と頭を下げた。田所と甘利は圧倒されたまま、立ち尽くしている。佐世保は訝しげに二人を見回した。

「今日は私の付き添いで、一緒に来て貰いました」

田所と甘利は打ち合わせ通り、付添人を演じている。取材で来たなどと知れれば、たちまち追い出されてしまう。

「簡単にここのシステムを話しておきましょう。先ず第一に、ここでは患者に直接面会は出来ません。全てモニタ-を通して行ないます。様子を見るだけなら、こちら側の映像と音声はOFFに出来ます。ONにする時は、赤いボタンを押して下さい。ランプが点灯している間は、貴方達の姿や声は向こう側のモニタ-に出ますから、まあ、テレビ電話の様な物ですな。え-と、今井さんは291号室ですな。それでは、ごゆっくり」


Vol.8へつづく