第二の事件 Vol.6

第二の事件 Vol.6

「法ちゃんは、出来る女性でね。近々出す新刊の編集長をね、お願いしていたのよ。実際、困っちゃてさあ。法ちゃん、ネタ元、抱え込む方だから。準備していたライタ-が解かんないのよ。ここに居る上ちゃんがね、助手やるはずだったんだけど。ほら、まだ入社仕立てでしょう。上ちゃんに何も言って無かったのよ」

法ちゃんとは、法子の事。上ちゃんとは、上田の事と、すぐ解かる。携帯のメモリ-も単純なものかもしれない。やはり捜査は足を運ぶもんだと、清美は今更ながらに痛感した。

「それで今日、お聞きしたいのは、福家法子さんの夫婦関係に関してなんですが」

「法ちゃん、プライベイトは秘密主義だったからね。あんた、如何なのよ」

突然、振られた上田はドギマギしている。敢えて干渉するつもりは無いが、沢村は一見するとオバちゃんに見える。

「私、福家さんのマンションに一度、行った事があって、これは本人から直接聞いた話しで、近々離婚するって。五年も別居状態が続いたから」

清美と二見は顔を見合わせた。これであの部屋の生活感の無さが納得出来た。そうすると離婚に関してのもつれか?更に保険金絡みの可能性も出てくる。これ以上の収穫はない“福家法子は問題を抱えていた。“ 

署に戻って軽い昼食を取った。午後からの会議で検死解剖の結果が、直接、担当した医師から発表される。丸尾とはあれ以来、連絡が取れていない。丁度良い機会なので、その後、弥生がどうなったか聞いてみよう。出来る事なら協力したい。清美は紙コップに入ったコ-ヒ-を一息に飲み干して、会議室へ向かった。十帖程の狭いスペ-スに、会議用の長テ-ブルがコの字に配置され、パイプイスが乱雑に並べられている。使用頻度の高いホワイトボ-ドには、別の事件の書き込みが消されずに残っている。外光はブラインドでシャッタ-され、昼間だというのに薄暗い。蛍光灯のスイッチを入れると、不規則に点滅して室内を明るくしていった。谷茂が居ればやらせるのだが、欠勤している為、清美は仕方なく雑巾でホワイトボ-ドの表面を拭き取っていった。
二見課長以下、刑事課の捜査員全員と鑑識課二名が間も無く集まり、捜査会議が始まった。以外にも解剖にあたったのは、丸尾教授では無く、助教授の渡辺だった。清美に不安が過った。弥生に何かあったのかもしれない。渡辺に事情を聞いて、その後で連絡を取ってみよう。掛けずらいなんて、言ってられない。
会議は淡々と進められていった。被害者、福屋法子は就寝中、吐瀉物による窒息が原因で事故死と断定された。死後、三日が経過していた。保険金を掛けられていた記録は無く、預金残高も大したものでは無かった。保険金及び財産目当てという読み筋は消える事になる。会議終了後、清美は渡辺に丸尾の状況を尋ねてみた。

「丸尾教授はですね、長期休暇を取られたんですよ。急にですよ。急に・・・。正直、困っていますよ」

「急にって、何時からなの」

「確か、一週間前だったと思います」

一週間前だと清美が丸尾家に出向いていった直後だ。やはり何かが起きていた。清美はあのままの状態で、帰って来たのを後悔した。

Vol.7へつづく