再捜査 Vol.1

再捜査 Vol.1

源三は清美の訪問を予期していた。清美でなくても別の刑事が、いつかは訪ねて来るだろうと考えていた。応じる準備は出来ている。法子は事故死であり、自分は一切関与していない。これが源三の結論だった。
清美は動じる事の無い源三の態度に、戦意を削がれる格好になった。怯んでしまえば、僅かに残された突破口すら失ってしまう。

「福家さんの死後、携帯に掛けてきたのは貴方ね」

「仕事の事で電話したけど死んでたんは、その時、知らんかった」

「知らないって、ニュ-スであれだけやってたでしょう」

「忙しいて、テレビ見てる暇、無かったし。だいたい後で知って、こっちが驚いたぐらいや。田所から仕事の依頼があって、始めたばっかりやったから」

「どうして田所って呼ぶの?変じゃない」

「離婚したし、あいつがそう呼べって」

「プライベイトな内容を話し合う関係だったのね」

源三の表情が曇った。清美が狙っていたチャンスだ。

「別居していたのも当然知っていたわね」

「どういう意味や!」

吹き出した怒りの背後には必ず隠しておきたいダ-クな部分が存在する。特別な訓練を受けた者でない限り、隠し通すのは不可能だ。源三の防御壁に亀裂が走った。

「それじゃあ、分かり易く言ってあげる。彼女のマンションに行ったわね」

源三は再度、思考を確認した。田所は事故死だ。

「昔はあそこ、溜まり場やったからな」

「私が聞いているのは最近の話よ。福家法子、貴方にとっては田所法子が亡くなった日、どこにいたか?もっと分かり易く言いましょうか。あの日、一緒に居たかと聞いているのよ」

源三はそのまま押し黙った。一緒に居た事を暗黙のうちに認めたのだ。清美は防御壁が崩れ去るのを待ち構えた。ところが、意に反して、源三が笑い出した。

「笑って誤魔化すつもり」

「誤魔化すも何も、あんた、もう刑事と違うやん。クビになったんニュ-スでやってたで。今更そんなん聞いてどうすんの?」

源三はありったけの嫌味を込めて笑った。同時に妙な意識が働いていた。倒れ掛かっている、みすぼらしい女を徹底的に破壊すること。土足で踏み込んで来た本人に責任がある。

「同じ次元におる者同士がやることちゃうな。そっちは何人も見殺しにしてるやん。そんなあんたが、何で俺に言えるねん。説明してくれや」


Vol.2へつづく