再捜査 Vol.2

再捜査 Vol.2

二人の間に圧倒的な距離感が生まれた。平行でなく高低差がある。清美は捜査員なる立場を思い知った。気が付かいない内に、擦り込まれていた意識レベルが、観察という名目で相手を見下し、蔑みもする。逆転した時にこそ真価が問われる。清美はギリギリの状態で切り返した。

「真実が知りたい。ただそれだけ」

「知ってどないすんねん。もう、意味無いやろ」

「今井さん、貴方はこのまま自分だけで抱え込んで生きていくつもり。いえ、それで生きていけるの?」

「そんな言い方されたら犯人みたいやん。二人供、事故死やし、俺には関係無い」

「僅かな期間に、二人の女が同じ死に方をするなんて。たとえ偶然にしても有り得ない。貴方が一番知っている事じゃない。法子が死んだ日も、貴方はあの部屋に居た。恐らく、また記憶が無かったんでしょう。だから亡くなったのを知らずに電話を掛けてきた」

源三は暫く黙っていた。動揺の色は見られない。むしろ落ち着きはらった表情をしている。

「だとしたら、どないする」

清美が知っている者とは微妙に違う人格を感じさせる声だった。この男は助けを必要としている。清美はそう直感した。

「事件は解決なんてしていない。これからも続いていく。阻止するには原因を見付けるしかない」

源三は大声を上げて笑った。

「そしたら、四六時中、俺を監視しとかんとあかんやん。それって罪になるんやろ。何やったら訴えよか。立場的にめちゃめちゃまずいんちゃうん」

清美はテ-ブルの上に置かれたハンディ-カムに目をやった。

「確か、前に来た時、これ無かったわよね」

「最近、買うたから、当たり前や。わざわざあんたの力を借りんでも、これ使って自分の無実ぐらい証明出来る」

「やはり記憶を失っている間の事に、自信を持って無いのね」

源三は清美をじっと見据えた。刑事だった頃の、犯人をえぐり出す鋭い目付きと違う何かがあった。正直、二人の死を、訳も解からず抱え込んで生きていく自信は無い。まして、再び同じ事態が起きたら、恐らく受け止める事は出来ない。間違いなく精神が崩壊してしまうだろう。その前に自らの命を断ってしまうかもしれない。打開するには専門の力が必要となる。今、そのチャンスが目の前にある。源三の心は揺れ動いた。

「もしやで、これは仮の話しやけど。俺が犯人やったらどないする?逮捕するんか」

「もう捜査員じゃないから、それは出来ないわ」

「そしたら警察に突き出すのか」

「はっきり言って、私も複雑な状況だから。一つだけ言えるのは、自分の力を確認したい。純粋に確認したいのよ。それ以上の事は考えていない。手柄を挙げようなんて、思ってもいないって事よ。私は何人もの人間を、見殺しにしてしまった。それを抱え込んだままで、この先、生きていけない。だから・・・」

再び起こるかもしれない不可解な事件を、必死に食い止めようとしている清美の姿が、源三の目には写った。二度と見殺しにはしないという決意を感じる。
源三は腹を決め、テ-ブルの上にポラロイド写真を放り投げた。身元不明の少女と源三が、嬉しそうに写っている。清美の表情が見る見る内に変わった。

Vol.3へつづく