再捜査 Vol.3


再捜査 Vol.3

「やっぱり、知っていたのね」

「いや、一緒に飲んだ事すら憶えてない。この子が死んだ日の俺の行動を、もう一回辿ってみたら、たまたま居酒屋で見付けたんや。目撃した奴もおったから、死ぬ直前まで一緒やったと思う」

「その間の記憶が無いのね」

頷いた源三の目に偽りの色は無かった。

「身元、解かったんか?」

「残念ながら行旅死亡人として処理されたわ。誰にも祀って貰えない無縁仏よ」

「俺、思うねんけど。この子の身元、真相に迫るには必要やないやろか」

次に源三はビデオテ-プを取り出しデッキにセットした。モニタ-に定点カメラで撮影された鮮明な映像が映し出される。フロ-リングを転がるロ-ラ-音と供に、真っ裸の男女が抱き合ったまま、フレ-ムインしてくる。清美は食い入る様に集中した。フルショットの男女は激しいプレイを繰り広げていった。一瞬、女の顔が映った。法子だ。男の顔も確認出来る。歪なノイズが走った。法子と源三は重なったまま動かない。再びノイズが走った。次に一人取り残された法子の姿だけが映っている。法子は腕を飲み込む様にして微動だにしない。清美はモニタ-から源三の方に目をやった。目が潤んでいて、泣いている様に見える。

「こんなん、誰にも見られた無かったし。絶対、公表せ-へん積もりやった。けど、これ見てもらわんと、先に話しが進められへんやろ。そやから・・・・。俺は法子が死んだ日、あいつのマンションでオメコしてたんや。断片的やけど、記憶がある。耐えられへんのは、一部始終を全部、知ってる奴が居る事や」

「これを撮影した人物が接触して来たのね」

「そうや。けど、金とか脅して来るんやったら、まだ解かるけど。その男はエエもん見せて貰った言うて笑ってるだけやねん。たまらんで」

「法子のダンナとは違うの?」

「全然違う。見た事も無い奴や。ただ、そいつが持ってるテ-プには全部映ってる。そこには真実がある。恐いけど知りたい。そやないと、一生その事にさいなまれ続ける。これ見てどう思う。俺が犯人か?このテ-プ、証拠になるんか!」

搾り出すようにして吐き出された源三の言葉は、疲労の色に包まれていた。ずっと一人で抱え込んでいたのだ。恐ろしい程の静寂が広がった。黙っているのが息苦しい。それでも清美は、暫く押し黙って考えた。適当な言葉がなかなか見つからなかった。源三が背負っている物の凄まじさが、痛いほど解かるからだ。自分も近い立場にあった。もっともっと深く考えた。たとえ偽りだったとしても、目の前にいる男の重圧を、今、この瞬間だけでも軽くしてやれる言葉が一つだけあった。清美は躊躇する事なく、その言葉を選んだ。

「貴方は犯人じゃ無い。犯人ならこれを私に見せるはずがない。オリジナルを手に入れれば、それは証明される。法子の死因は窒息による事故死よ」

源三は清美をじっと見つめた。嘘でも嬉しかった。プロの人間が言ってくれたからだ。

「見せたら、ごっつい楽になった。やっぱり自分を誤魔化されへんわ。オリジナルに映ってるもん、見んとあかんのや。こんなん買うて二十四時間、自分で監視しょうと思たけど、一生続けていけるもんと違う」

改めて清美はテ-ブルのDVカムを見て、ハッとなった。

「法子は監視されていた。一体だれに?何の為に?」

清美は源三とにらみ合うようにして、思考を巡らせた。

「テ-プとカメラを持って、一緒に来て」


Vol.4へつづく