再捜査 Vol.4


再捜査 Vol.4

清美は慌ただしく源三を急き立てて、法子が住んでいたマンションへ向かった。
マンション一帯は静まり返っていた。午前三時を過ぎているのと、昨夜から吹き荒れている突風が体感温度を急速に低下させていた為、行き交う人の姿は無かった。エントランス横にある管理人室もクロ-ズになっている。二人は辺りの様子を伺いながら、エレベ-タ-で四階に向かった。

「こんなとこ来て、どないすんねん。勝手に入ったら不味いんとちゃうか」

「確かめたい事があるの。送られて来たテ-プの謎が解けるかもしれないから」

404号室の玄関ドアには、立ち入り禁止の規制線が張られたままになっていた。鍵は掛かっている。事件が解決しているにもかかわらず、清が部屋の整理に来ていないのだ。

-死んでしまえば、関係無いと言う事か!-

怒りを押し殺して清美は、つがいのピックを鍵穴に差し込んだ。間もなくガチャンと鈍い金属音が響き渡った。清美は細心の注意を払いながら、ドアを開いた。室内は闇に包まれている。清美はペンライトをかざして、玄関ドアの上に設置されたブレイカ-のスイッチをONにした。常夜灯の白熱球が発光し、続いて蛍光灯が連続して点灯していった。息を殺して、ゆっくりとした動作でリビングに向かう。残留した腐敗臭が襲い掛かってくる。ついこの前、SEXした法子そのものの臭いだ。源三はたまらず袖口で鼻と口を覆い隠した。注意深く部屋の隅々までチェックしていた清美は、家宅捜査の状況を思い起こしながら、目前の光景と照らし合わせていった。源三は出来れば二度と来たくなかったリビングの中を恐る恐る見回した。法子が倒れていたであろう床の上に、人型の白線が張り巡らされてある。流れ出した体液が黒く干からびてシミになっていた。微かに残った記憶とダブル。いい気はしなかった。もしかすると可能性もまだ残されている。清美に促されるまま、ついて来た事を後悔した。

「ここだ!ここに熊のぬいぐるみがあったのよ」

清美は書籍と雑誌で溢れ返った本棚を指差した。

「ぬいぐるみが、どないしたんや。もう、ええやろ。悪趣味やで」

「そうじゃなくて、カメラ貸して。貴方はテ-プをデッキにセットして」

清美はテディベアが置かれてあった同じ場所にDVカムを設置して、RECを始めた。ビュ-ファインダ-に人型の白線が映し出される。源三はデッキをセットして、テレビのスイッチを入れた。巻戻さずに持って来ていたので、モニタ-にだらしなく横たわった法子の姿が浮かび上がった。

「そこでポ-ズして、こっちに来て」

源三は指示通りデッキのポ-ズボタンを押して、ビュ-ファインダ-を覗き込んだ。

「見比べて」

源三はモニタ-とファインダ-を何度も見比べた。だらしなく横たわった法子と人型の白線がだぶり始め、一致する。

「これどういう事や。殆ど同じやん」

清美は確信を得ていた。

「ここに熊のぬいぐるみが置いてあった。中にカメラが仕込まれていたのよ。もしくは電波で飛ばせる盗撮用の小型カメラが。ぬいぐるみは家宅の時、ここにあった。間違いない。私がこの目で確認しているんだもの。それを清が家宅後、持ち出しているのよ。その事は本人が自白した。出棺用に持ち出したなんて嘘よ。カメラを回収する為だったんだ。つまり、オリジナルは清が持っている」

「そう言えば法子の奴、離婚で揉めてるって言うてた。こうも言うてた。旦那が浮気してるって。そうや、それも男と。つまり何か、俺に近づいて来た変な奴は、旦那のこれか?」

突き上げた源三の小指が震えていた。


Vol.5へつづく