生霊 Vol.3

生霊 Vol.3

「清の所在はそっちでやってくれへんか。俺、どうしても引っ掛かる事があんねん。荒唐無稽な話しやと思てもうてもかまへんけど。法子が死んだ日、俺とあいつは甘利って言う教授と一緒に、ある取材に行ったんや。そこで説明の付けへん現象が起こった。その時は気にもせ-へんかったけど、法子が死んだ以降、教授と連絡が取れへんなったんや。取材後、今から思えば教授の様子が変やった。後日もう一回、三人で会うて結果をまとめる予定になってたんやけど、こんな事態になって、それっきりや」

「甘利教授ってどんな人なの」

源三は甘利に関しての経歴と霊能力者であること、それから取材内容を細かく説明した。さすがに少し前まで捜査員だった清美は十八年前、厚木で起こった猟奇殺人事件の詳細を細かく知っていた。それまで日本で起こっていた殺人事件の動機は怨恨によるものが圧倒的に多かった為、今だ動機が解明されていない厚木の事件は、当時、警察関係者の間でも研究対象になり、言わば動機なき猟奇殺人のはしりの様な事件だったのだ。動機なきとは言っても、被告が語った供述調書には「悪魔が躰の中に入ったまま、出て来ないから」とはっきり記録が残されている。起訴段階でこの自供は認められず、被告は措置入院を余儀なくされ現在に至っている。

「浅田ミチエ事件は未だに不可解な点が多数あって、警察関係者の間でも謎とされている部分が多いのよ。当時、公安関係者が密かに動いていたって言う噂があったぐらいよ」

「公安が、何の為に?」

「私が警察学校に通っていた頃だから、それ以上は詳しく知らないけど、恐らく、動機の理由付けが為されていたんじゃないかと、考えられるの。当時、プロファイリングは認識されていなかったし、アメリカで起こった猟奇殺人事件はモデルには成らなかったのよ。あっちじゃ悪魔崇拝者を認識しているのにね。精神病と認定してしまうと、被告は数年後には出て来てしまうでしょう。留めておきたい何かがあったのよ」

「今まで無かったケ-スにしても、妙な話しやな」

「逆によくミチエの入院先を捜し出したわね。ミチエに関しては極秘扱いになっているはずだけど」 「仕事柄、追跡調査は得意なんや」

源三は別れた妻の件には触れないように誤魔化した。元、妻の同居人がミチエだとは言えなかった。

「甘利教授はさっき聞いた霊能力で何かを見たのかしら」

「それを俺も確かめたいんや。もっとも、こんな話し、信じてへんやろ。あまりに現実離れしとるからな」

「そうでも無いわよ。私達の世代って非現実的な現象に免疫があるじゃない。少なくとも私は“ある種の力“を否定はしないから」

突然、源三の携帯がバイブレ-タ-を振動させた。携帯に出た源三の表情が見る見る内に変化していった。

「一体どうされていたんですか。事件の事はご存じですか。あっ、解かります。はい、それじゃ、これから直ぐに伺います」

携帯を切った源三の顔は上気していた。

「教授の様子がおかしい。これから会うけど、どないする?」

「勿論、会うわ。私も」

清美に断る理由は無かった。ありとあらゆる可能性を受け入れる準備が既にあったから。


Vol.4へつづく