協力者 Vol.10

協力者 Vol.10

鳳凰の間では、渡辺がセミナ-参加者を記録したビデオテ-プを用意して待っていた。だだっ広い場内は、モスグリ-ン色のジュ-タンが敷き詰められ、天井から高級なのか、イミテ-ションなのか判別が付かない様なシャンデリアが、等間隔に垂れ下がっている。結婚式の披露宴で使用するのが主な目的だろう。設置されたステ-ジにはスポットライトやミラ-ボ-ルまである。渡辺の合図で場内は暗転し、巨大スクリ-ンにプロジェクタ-から映像が照射されていく。イベントで新郎新婦の幼少時代から二人の馴れ初めまでをビデオクリップ風に編集した映像を披露する為のシステムだが、セミナ-のドキュメントが流れると、場違いな感じすらする。手持ちのDVカムで撮影された映像は不安定で、人物を的確に捕えたものでは無かった。恐らく、殆どカメラの知識が無い渡辺が、いい加減に撮影していたのだろう。参加者達が入れ替り立ち替りフレ-ムインしてはアウトしていく。丸尾と弥生の姿もある。弥生は以前、会った時と随分、印象が違っていた。ずんぐりむっくりだった体型から、胸元は膨らみ、腰はくびれ、手足がほっそりと長く均整の取れたスマ-トな身体へと変貌を遂げていた。金髪に流行りのメイクを施した顔は、何方かというとブサイクな部類に属していた弥生からは想像も出来ないぐらい美しかった。清美の目から見てもドキッとする程で、生きていれば来年、中学生になるはずだった弥生は、既に女として進化していたのだ。清美は目頭が熱くなった。自分が何とかしていれば、美しく成長を遂げた弥生は生きていたかもしれないのだ。ビデオで再会したことによって、弥生の印象はより美しい存在として定着し、それだけに、胸が締め付けられる様な痛みが増していった。忘れようとしても、一生忘れられないだろう。今更ながらに、清美は後悔の念でいっぱいになった。

「そんなこと無いで、清美の責任と違う」

声のする方を見ると、源三が横に並んで立っていた。

「人の頭の中、勝手に見るの止めてくれるかな。気分悪いって」

源三の気持ちが嬉しかったが、素直に喜ぶことは出来なかった。スクリ-ンに映し出された会場が暗転した。スポットライトを浴びた甘利と高峰が、厳かに登場してくる。よくある演出だが、それなりに効果はあった。会員達が羨望の眼差しを向けているからだ。その中に一人だけ、睨み付けるようにして座っている少女が居た。舞だ。

源三は舞の行動に集中した。ポラロイドでしか確認していない恵と、全く見分けが付かなかった。甘利と高峰が呪文を唱え始めて直ぐに、舞は立ち上がった。画面にデジタル・ノイズ特有の歪なブロックの亀裂が走り、画面は突然、プツンと消えてしまった。渡辺の合図で場内が明るくなった。

「渡辺、この後どうしたんだ。これからが大事な所だろ!」

高峰の言う通り、一番見たい部分が未収録のままだ。

「いえ、カメラは回しっぱなしにしてましたから・・・。変だな」

渡辺は不服そうにしながらも、若干、当惑気味にDVデッキをチェックするが、映像はノイズと共に途切れたまま、再生されることはなかった。

「全く、使えねえ奴だ」

高峰の怒りは納まらない。

「だけど、参加者の面はこれで十分確認出来るし、私達の知っている恵と、ここに映っている舞は瓜二つだった。貴方達の世界で言う、ミチエが乗り移っているなら、この子なんでしょう。仮に、他者へ乗り移っているとしたら、ざっと見ただけでも参加者は50人近く居るわ。まして消息を絶っているなら、一人一人捜し出すのは不可能でしょう。少なくともここに居る人数だけじゃ、軽く三日は掛かるんじゃない。たとえ舞に絞り込だとしても、私達の機動力じゃ太刀打ち出来ない。勝手に人の頭の中を覗き見る暇があるなら、一刻も早く対処しないと、次から次に死者が出るんじゃない」

Vol.11へつづく