福居ショウジンの秘蔵小説

二九一号室ノ住人

プロローグ

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身元不明の少女 Ⅰ

1 / 2 / 3 / 4 / 5

身元不明の少女 Ⅱ

1 / 2 / 3 / 4

身元不明の少女 Ⅲ

1 / 2 / 3

弥生

1 / 2 / 3 / 4 / 5

291号室

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

第二の事件

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7

リプレイ

1 / 2 / 3

見殺し

1 / 2 / 3 / 4 / 5

再捜査

1 / 2 / 3 / 4 / 5

生霊

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7

協力者

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9 / 10
11 / 12 / 13 / 14 / 15

潜伏

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

果て無き興亡

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

再捜査 Ⅱ

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6 / 7 / 8 / 9 / 10

エピローグ

1

協力者 Vol.6

「浅田ミチエの取材から戻って来た日から、先生の様子が変わりました。直ぐにセミナ-に協力してもらっている霊能者の高峰さんに相談して、ミチエの事を洗い始めたんです。傍目から見ていても切羽詰っているようでした。と言うのも、先生がミチエに面会する1ヶ月も前に行なったセミナ-でこんなことがあったからです」

渡辺は暫く思いを巡らせてから、説明に戻った。

「その日は初めて来られた方が多く、その中に一ノ瀬舞と言う女子高生も居たんです。高峰さんが霊視を開始した時、異変は起きました。僕もこの目で目撃していながら、未だに信じられませんが、その子が空中浮遊したんです。同じタイミングで会場に居た参加者全員がトランス状態に入ってしまいました。今まで、こんな光景を見た事ありません。その後、先生と高峰さん以外、会場に居た全員が記憶を失ったんです。もちろん私もです。これは後から先生に聞いたんですが、その間に、舞という子と高峰さんの交流があったそうです」

「交流って?」

「先生が言うには、舞の中に入った別の人格との対話です。舞ははっきり言ったそうです。自分は浅田ミチエだと。まさかその時、舞がミチエの娘だなんて誰も知りません。先生と高峰さんは浅田ミチエの事件を憶えてまして、消息を捜したんです。すると如何です。親族以外の者が絶対に面会出来ない、川中精神病院に隔離されているじゃないですか。先生は知り合いの精神医学者の伝を辿って、事件当日、ミチエを診察した医師を捜し出したんです。そこで双子の姉妹、舞と恵を出産していた事実を知りました。その内の一人が、セミナ-にやって来た一ノ瀬舞であった事も。先生も高峰さんも何か良くない事が起きる前触れじゃないかと、心配していました。そして今井さん、貴方が浅田ミチエとの面会の話を、持って来たのです。先生も高峰さんもこれには驚いていました。こんな偶然ってありますか?先生はミチエに面会して、確信したそうです。隔離されているミチエは、肉体だけの存在で、意志は無いと・・・。しかもセミナ-に来た舞に乗り移っていたんだと。田所法子さんが、急にあんな死に方をして、先生と高峰さんは切羽詰った状況に追い詰められていきました。特に先生は、次に殺られるのは自分だと、精神的に参っていました。高峰さんは舞を捜し出して、ミチエの意志を封じ込める方法を考えたんですが、気が付いた時には遅かったんです。舞と一ノ瀬夫婦は姿を消してしまっていたんですから。舞が見つからない以上、自分達で手を打つしかありません。先生と高峰さんは御祓いを決行する為、準備を始めたんですが。先生はその為に、必要な物を手に入れる目的で名古屋へ向かったんですが、こんな事になってしまって」

「教授は何を手に入れようとしていたんですか」

「それは解かりません」

「高峰さんは今何処に?」

「こちらに向かっているところです。そろそろ到着されます」

渡辺は腕時計を慌ただしく確認した。話に集中していた為か、気が付かない内に店内は客でごった返していた。

突然、渡辺が立ち上がって手招きを繰り返した。清美と源三はその方を何気無しに見てみると、渡辺とさほど年齢が変わらない中年女性がゆっくりとした足取りで近づいて来る。「まさか、この何処にでもいそうな中年のおばちゃんが高峰か」と、二人は期待外れのような感覚に襲われていた。

Vol.7へつづく

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