福居ショウジンの秘蔵小説

二九一号室ノ住人

プロローグ

1 / 2

身元不明の少女 Ⅰ

1 / 2 / 3 / 4 / 5

身元不明の少女 Ⅱ

1 / 2 / 3 / 4

身元不明の少女 Ⅲ

1 / 2 / 3

弥生

1 / 2 / 3 / 4 / 5

291号室

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

第二の事件

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7

リプレイ

1 / 2 / 3

見殺し

1 / 2 / 3 / 4 / 5

再捜査

1 / 2 / 3 / 4 / 5

生霊

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7

協力者

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9 / 10
11 / 12 / 13 / 14 / 15

潜伏

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

果て無き興亡

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

再捜査 Ⅱ

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9 / 10

エピローグ

1

再捜査 Ⅱ Vol.2

「すいません、遅くなりました」

暫く見ない内に谷茂は随分とスリムになり、顔付きすら変化していて、街で擦れ違っても一目では判断出来ないぐらい変貌を遂げていた。

「随分、痩せたじゃない」

「課長命令で、減量させられました。もうヘトヘトですよ。今、目の前でひったくりがあっても、まず追い掛けられないです」

笑った顔の谷茂は心身供に成長し、まるで別者へと変格を遂げているようだった。

「二十キロですよ、二十キロ。デカがブクブクと太ってたら、それだけで税金の無駄使いだなんて本当、立場ないですよ」

清美は少し救われた様な気がしていた。ブクブク太って何の頼りにもならない谷茂を利用していたのは間違いない。罪悪感もあった。タイミングを見て詫びたいとさえ思っていた。良い意味で変格を遂げた谷茂は、清美の凍結した心を溶解させるには十分だった。

「それで何?いきなり呼び出すからビックリするじゃない」

谷茂の表情が変わった。変わったというより曇ったといった方がより的確かもしれない。

「実は止めたんですよ、警察」

「エッ!」

清美の驚嘆した声があまりに大きかった為か、周りの客達の注目を一手に引き受けてしまう格好になった。

「止めたって、どういう事?詮索するつもりは無いけど」

「いいですよ、詮索して下さい」

「私はクビになった身だから、そこまで出来ないわ」

「それでも聞いて貰いますよ。先輩、無関係じゃないから」

谷茂が険しい表情をしてきた。恐らく自分も、そうなっているだろうと思いながら次の言葉を待った。

「今回の一件、本庁は迷宮入りにする方向で動いています。事件に関わった中野東署の捜査員は全員、内部調査を受けました。どうやら僕までもマ-クされたみたいで」

谷茂はわざとらしく辺りをキョロキョロ見回す仕草をして見せた。

「私は復帰を促されたわ」

「だから連絡したんです。これは課長からなんでけど、決して受けないようにと。署の中では本当の事は言えませんから」

「課長にも張り付いているのね」

谷茂は頷きながら古びたノ-トを差し出してきた。

「課長が使ってた、昔の捜査ノ-トらしいです。先輩に渡すようにと」

辺りに注意を払いながら清美はノ-トをバックの中に押し込んだ。

「それで、谷茂はこれからどうするつもり」

「課長の指示に従います。課長が表立って動けない部分をカバ-することになります。もう、腹は括ってますから」

「私にも協力しろって事ね」

谷茂の鋭い眼光が、光った様に見えた。

「それで、私は何をすればいいの?既に捜査権は無いし、情報だって私自身、判断がつかないぐらい曖昧だから」

「その中に真実が隠されているんですよ。これ、課長の受売りですけど」

「課長は何か掴んでいるのね」

「だから先輩を危険から遠ざけようとして僕をよこしたんです。もっとも、課長が何処まで知っているのか判りませんけど」

「谷茂、あなたに公安が張り付いているなら、これ以上話すのは危険ね。少なくとも私の方が、彼らの手口を知っているから」

「そうですね」

谷茂が前のめりになって声を潜めた。

「課長からの伝言です」

Vol.3へつづく

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