プロローグ
身元不明の少女 Ⅰ
1
/
2
/
3
/
4
/
5
身元不明の少女 Ⅱ
1
/
2
/
3
/
4
身元不明の少女 Ⅲ
弥生
1
/
2
/
3
/
4
/
5
291号室
1
/
2
/
3
/
4
/
5
6
/
7
/
8
/
9
第二の事件
1
/
2
/
3
/
4
/
5
6
/
7
リプレイ
見殺し
1
/
2
/
3
/
4
/
5
再捜査
1
/
2
/
3
/
4
/
5
生霊
1
/
2
/
3
/
4
/
5
6
/
7
協力者
潜伏
1
/
2
/
3
/
4
/
5
6
/
7
/
8
/
9
果て無き興亡
1
/
2
/
3
/
4
/
5
6
/
7
/
8
/
9
再捜査 Ⅱ
1
/
2
/
3
/
4
/
5
6
/
7
/
8
/
9
/
10
エピローグ
|
果て無き興亡 Vol.3
「だって、仮眠のつもりで眠っただけなのに、そんなバカな。それより貴方達は何時からここに居るの?」
「強制捜査のあった日の夜からです」
「全く訳が解からない」
「貴方は眠らされていたということです」
「眠らされた?誰がそんな」
「今井源三にです」
清美は清が言っている事を、全く理解出来なかった。
「源三が?どうして私を」
「いいですか。説明しますので、冷静に聞いて貰えますね?」
「ちょっと待って。源三やマスタ-と高峰は何処に居るの?その事から答えなさいよ。私を置いて逃げる訳無いし・・・。あっ!もしかしたら何処かで舞と・・・」
「源三達は現在、逃走中です。妻の佐和子と供に」
「妻?」
清美は今だ状況が把握出来ないままだった。佐和子って誰だ?聞いた事も無い名前だ。清は清美の疑問を察したようで、もう一度、繰り返した。
「川中精神病院に隔離されていた源三の妻、佐和子です」
「源三は奥さんと離婚したのよ。迎えに行けるはずがないじゃない。それに逃走って何よ。訳が解かんない。だいたい貴方達、排卵誘発剤Rの副作用の事実をもみ消す為に存在しているんでしょう。浅田ミチエはその犠牲者よ。Rの為にこんな事態になったんじゃない。私達はその証拠を握っているのよ。それが世間に出れば、貴方達はおしまいよ。早く源三を渡しなさい」
溢れ出てくる怒りを清美は抑えることが出来なかった。小男が雑誌を差し出してきた。
「そんなの知ってるわ。これ源三が書いた記事じゃない。次号で総てが明らかになるわ」
「これは強制捜査の翌日に出た別の雑誌で、事前に出た二誌とは別の物です」
小男の聞き取りずらいしゃがれた声が癇にさわったが、ともかく雑誌の表紙に目を落としてみた。言われてみれば、自分が確認した雑誌と表紙が違っている。別の物だ。
「それじゃあ、ここに浅田ミチエの過去とRの真実が載っているのね。源三達、入稿の日程を繰り上げたんだ」
清美は小男から雑誌をひったくり、パラパラと捲っていった。
「あった。これよ。Rに関して書かれてるじゃない」
「最後まで読んで下さい」
「こんなの読まなくても、全部知っているのよ。必要ないわ」
「浅田ミチエはRの犠牲者ではありません。全く関係無いんです。これから総て説明しますから、先ず、読んで下さい」
ともかく小男の発する声が嫌だったが、あまりにしつこく言うので、清美は読み進めていくしかなかった。ヒ素ミルク事件の概要、排卵誘発剤Rに関するプロジェクト、総て知っている事だ。清美は読み進めていく内に、Rの犠牲者について書かれていた箇所で目を止めた。何度も読み返してみたが、我が目を疑うしかなかった。知らぬうちに身体が震えていた。雑誌を持つ手の震えを抑え切れず、床に落としてしまったほどだ。
「こんなの嘘よ。事実と違ってる」
「貴方はだまされていたんです。ここに書かれているのが真実です。Rに関しての記述は間違いありません。副作用があったのも事実です。プロジェクトが失敗に終わったのもです。昭和35年から五年間、被験者は二万人を超えるんですが、成功したのはたった二組の夫婦だけなんです。一組は山岸卓と花江から産まれた卓也。もう一組は野崎雄一と珠美から産まれた佐和子。この二名だけなんです。念を押しておきますが、浅田ミチエは全く関係ありません」
|