福居ショウジンの秘蔵小説

二九一号室ノ住人

プロローグ

1 / 2

身元不明の少女 Ⅰ

1 / 2 / 3 / 4 / 5

身元不明の少女 Ⅱ

1 / 2 / 3 / 4

身元不明の少女 Ⅲ

1 / 2 / 3

弥生

1 / 2 / 3 / 4 / 5

291号室

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

第二の事件

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7

リプレイ

1 / 2 / 3

見殺し

1 / 2 / 3 / 4 / 5

再捜査

1 / 2 / 3 / 4 / 5

生霊

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7

協力者

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9 / 10
11 / 12 / 13 / 14 / 15

潜伏

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

果て無き興亡

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

再捜査 Ⅱ

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9 / 10

エピローグ

1

潜伏 Vol.3

日付が変わって、深夜に突入した。暫く目的地を決めずに走っていると、高峰から清美の携帯に連絡が入り、品川プリンスホテルでピックアップすることになった。乗り込んできた高峰はマスタ-と目を合わせようともせず、車内に気まずい雰囲気が流れていった。マスタ-は高峰に不信感を抱いたようだ。気を利かせて清美が紹介しょうとすると、高峰がそんな事しなくても全て解かっているんだから、とでも言いたげな表情をしてきた。
-そうだ。この人は相手の思考を読み取ってしまうんだ。-
清美は咄嗟に思考中枢のシ-ルドを張ろうとするが、それ自体、高峰に見透かされているようで、直ぐに放棄してしまった。突然、心臓の高鳴りを覚えた。源三は能力者とツインになると、同じ力を持ち得てしまう。感情の防御壁だけは崩壊させてはならない。清美は全神経を集中させて、後続車両に意識を傾けた。

「セミナ-の参加者達は全員シロだ。生きていた。つまり、ミチエの霊体はまだ舞の中に居座っているということになる。私の読みが甘かったようだね。丸尾家のやり方に惑わされていたんだ。あれこそ、巧妙な手口だ。舞の肉体はフィットしたんだ。ミチエは本来の力を発揮してくるよ。何としても阻止しないと、どえらい事になるだろうね」

高峰は悔しそうな表情をして、鋭い目付きになった。

「と言うことは、目的が一つになったんや。秘密を知る俺達を抹殺するのみや・・・」

源三は高峰に暴露記事の計画を掻い摘んで説明した。高峰も舞を誘き出す方法を思案していたようで、マスコミを利用するのには、大いに乗り気になった。

「なるほどな。今回の記事でミチエの存在と能力を明らかにして、次号でミチエの過去を暴露してやれば、奴らは次号が出るまでに、あらゆる手段を使ってでも、もみ消そうとしてくるね。ところで、肝心の過去って何だ」

「これは飽く迄トラップだから。私達もその情報を入手する必要があるのよ」

後続車両をチェックしていた清美は源三の説明を補足した。

「その必要ないで」

源三はディスクを振りかざして断定的な言い方をしてきた。

「必要ないって・・・・。清の行動を阻止するには絶対不可欠じゃない。それが源三の身を守るんじゃない」

源三は清美にディスクを差し出した。

「だから、この中に情報が入ってるねん」

「どういう事?」

清美は無意識の内に声を荒げていた。

「法子のマンションに行った時、見つけたんや」

清美は「あっ!」と言ったまま、次の言葉を失った。源三と侵入した時の情景が、鮮明に蘇ってくる。源三の特殊能力を垣間見た瞬間でもある。

「CDデッキに入ってたから、音楽物やと思ったんや。けど、どうも気になって持ち出したんやけど、まさかこれにネタが入ってるとはな。法子は知恵が回るで。さっき原稿書いてる時、試しに起動させてみたら出てきたんや。このなかにミチエの過去が書かれてた」

源三がパソコンに向かっている時、大声を上げたのはその為だったのか。それでも清美は納得がいかなかった。

「それにしても、直ぐに言って欲しかった。最も重要な事じゃない。まあいいわ。ゴチャゴチャ言ってもしょうがない。ところでパスワ-ドで、ロックされていたんじゃない?」

「その辺、あいつも単純やな。291って打ち込んだら出て来たわ。灯台もと暗しの積もりで、隠すんは上手いけど」

「291?」

「ミチエが隔離されてる病室ナンバ-や」

清美の怒りは収まらない。

「そんな大事な発見、何で言わないかな?私を信用してないのね」

清美は捜査員としてのプライドを、傷付けられた気分になっていた。

「違うって!入稿するのが最優先やないか。済んだら言う積もりやったんや。隠してた訳や無い。それにおばちゃんも一緒の方がええやろ」

感情的な対立が二人の間に生まれたが、高峰が割って入ってくる形で一括した。

「だから何て書いてあるんだい。内輪揉めしている場合じゃないだろう」

高峰の言う通り、揉めている余裕はない。入稿出来たからといって、源三に迫った危機が回避された訳じゃ無かったのだ。清美はパソコンの画面に表示された文字を追った。ざっと見ても膨大な分量で、総てを読み込むには時間が掛かりそうだ。パソコンに集中していると、後続車両のチェックが疎かになってしまう。

「何が書かれてあったのか、掻い摘んで説明してよ」

相変わらず清美の憤りは収まらず、意識的に命令口調になっていた。

Vol.4へつづく

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