福居ショウジンの秘蔵小説

二九一号室ノ住人

プロローグ

1 / 2

身元不明の少女 Ⅰ

1 / 2 / 3 / 4 / 5

身元不明の少女 Ⅱ

1 / 2 / 3 / 4

身元不明の少女 Ⅲ

1 / 2 / 3

弥生

1 / 2 / 3 / 4 / 5

291号室

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

第二の事件

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7

リプレイ

1 / 2 / 3

見殺し

1 / 2 / 3 / 4 / 5

再捜査

1 / 2 / 3 / 4 / 5

生霊

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7

協力者

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9 / 10
11 / 12 / 13 / 14 / 15

潜伏

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

果て無き興亡

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9

再捜査 Ⅱ

1 / 2 / 3 / 4 / 5
6 / 7 / 8 / 9 / 10

エピローグ

1

潜伏 Vol.8

「まさか、こんな状況になるなんて」

「清は動きずらいはずやから。舞と行動してんのは間違いないやろ。ということは、当面、命は保障されたと判断してええで」

「でも捜査の手が源三に及ぶのよ」

「清美は俺の事、信じてくれるんやろ」

「当たり前じゃないの。真実は私達だけが知っている。でも捜査本部は暴露記事を鵜呑みにするかしら?犯人がミチエの生霊だなんて認めないわ。たとえ真実を歪めることになっても、犯人を作り上げるしかない」

「マスコミはフィクションと現実をゴチャ混ぜにすんの得意やないか。無理にでもミチエを科学的にこじ付けようとするで」

清美は源三の隣に並んで座った。こんなにも危機的状況にありながら、源三の横に居ると不思議に恐さは無い。他人に足を掬われまいと、ずっと気を張って捜査員の職務を真っ当してきた清美にとって、こんな感覚は始めてだった。感情の高ぶりはもう押えられない。女としての部分が剥き出しになっているはずだ。頭の中を読み込む能力が無くても容易に解かる状態だろう。モ-ニングショ-が始まった。どの局も一様に暴露記事を取り上げている。昨夜以上に過熱した報道の大半は、憶測ばかりが飛び交わされているだけだ。事実からどんどん掛け離れていく。再び、谷茂から携帯が入った。清美は立ち上がって源三から少し離れた所で着信ボタンを押した。谷茂の声が上擦っていた。

「どうやら公安部も動くらしいです。明朝、五時に川中精神病院の強制捜査が決行されます。本庁は神奈川県警と合同で、これ二見課長が言ってたんですが、かなり大掛かりなものになるそうです」

「浅田ミチエに対して行なうってこと?」

「表向きは違います。でも目的はそれです。現在、患者が300名近く収容されているそうなんですが、ミチエ以外、一時、別の場所に移送されるそうです。今、本部はそれで天手古舞なんですが、急な対応処置ですから一時帰宅も認められます。措置入院患者で問題のある者に関してだけ、警察病院へ隔離します。僕、患者の家族への連絡を取らされているんですが、暫く連絡が入れられないと思います」

「わざわざありがとう。そうするとマスコミはシャットアウトされるのね。当然、患者の人権が重視されるもの」

「でも強制捜査の様子は生中継させるって、言ってましたよ。もしかしたら浅田ミチエが何かしでかすかもしれないって事ですか?」

「谷茂、もっと現実的になりなさい。捜査の目的は施設から外部に通じる経路が存在するかどうかを調べる事だから。それと公安批判に対する、これは一種のデモンストレ-ションよ」

「みんな口には出しませんけど、ミチエの妙な力を恐れているみたいなんです」

「解かった。気が付いた事があれば、こっちからも連絡入れるから。谷茂は自分の任務を頑張りなさい」

Vol.9へつづく

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